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    「なにしろ、迷ふんだな」

    が、練吉が駆け登つたのを見ると、先方の男は急に威丈高になつて怒鳴つた。

    「往診ですか」

    房一は向ふへ行きかけた。徳次はさつきから云はうとしてまだ云ひ出せずにいることがあつた。それに何と呼びかけていゝかも判らない。房一の姿は段々遠のく。突然、徳次は散々思ひ屈した後に出るあの大胆さで大声に叫んだ。

    「あれなら、私の方からいゝやうにしときます」

    と、大声で訊いた。

    と、下の男は睨み上げた。

    「さやうでござりますか」

    「何しに来た?」

    「徳さん、君は草履ばきぢやないか」

    その時、又あの鈍い重量のある音が下流の方からどよめいて来た。それは前のよりもはるかに大きく、つゞけさまだつた。

    と、房一の近くで云ふ声が聞えた。今泉らしかつた。つづいて同じ声が

    「ほゝう!」

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